「チョコレートの世界史」を読んだ
バレンタインデー記念エントリー。ちょうど時期が良いので昔読んだ本の感想を投下。
チョコレートの世界史―近代ヨーロッパが磨き上げた褐色の宝石 (中公新書)
- 作者: 武田尚子
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2010/12/01
- メディア: 単行本
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感想
若干ネタバレになりますが、本書は某大学のロウントリー社(オリジナルのキットカットを製造した会社)の資料コーナーを著者が訪れたことが原点にあるらしいので若干ロウントリー社贔屓な歴史書になっている。
チョコレートは以外と歴史が浅く、特に今の固形のものが食されるようになってからまだ200年も建っていない。本書には中南米がスペインに侵略されてからカカオを加工する技術がヨーロッパ諸国で発展してキットカットが出来上がる歴史が書かれている。
個人的にはチョコレートの成分とかが詳しく書かれているところが分かりやすかった。カカオポッド、カカオパウダー、カカオバター、カカオマス、カカオニブの違いは全くわからなかったけど、本書で理解した。
ノート
チョコレートの品種は結構コーヒーに似てる
カカオ豆には、ポリフェノールの含有量が異なる三種類の系統がある。クリオロ種、フォラステロ種、トリニタリオ種という。
クリオロ種でビター系のチョコレートを作ると、抜群の味になる。クリオロ種は生の豆を食べても美味に感じるという。しかし、病気に弱いため、栽培が難しい。稀少品種で、現在世界で生産されているカカオ豆の一%程度の生産量にすぎない。フォラステロ種は、ポリフェノールを多く含む。栽培が容易な強い品種で、世界の生産量の約八五~九○%を占める。味にパンチはあるが、苦味が強い。そのままでは、ビター系のチョコレートには向かない。
コーヒーも似た感じでアラビカ種とロブスタ種があり、
- 美味しいけど病気に弱く量が取れないアラビカ
- 味は劣るけど病気に強くで量が取れるロブスタ
という風になっている。この種構成に関して、コーヒーと比べた時のチョコレートの特筆点は美味しい方(クリオロ)が極端に出回っていない、という点だと思う。
コーヒーはアラビカ種の方が消費量が多い*1。私個人の経験でもロブスタ100%のコーヒーは飲んだ覚えがない。逆にチョコレートに関してはこの本を読むまでクリオロ種のものは食べたことがなかった。
お店で買えるクリオロ種チョコレート
市販されているものの中で安いクリオロ種のものはカルディに売ってあったペルー産の板チョコがあった。こちらはカカオ分の高いブラックチョコレートだが、評判通りブラックチョコレートでも美味しく、他のものによくある強い苦味がなく美味しく食べられた。値段も安かったのでおすすめ。ちょっと前流行ったbean to barのチョコレートは高すぎる(板チョコ1枚くらいの量で数千円)ので個人的に日用するのは無理。
チョコレートの製造方法とかややこしい成分とか
- カカオポッドからカカオ豆を取り出す
- カカオ豆を砕きカカオニブ(胚乳)を取り出す
- カカオニブをローストする
- カカオニブをすりつぶしてカカオマス(ドロドロ状のものを作る)
ここまでがチョコレートとココアパウダー製造の共通部分。ここからが工程が違っている。
ココアパウダー
チョコレート
一応チョコレートの作り方はここに色々応用があり、例えばホワイトチョコレートを作る際はカカオマスは使わずココアバターのみを使う。ここアバターの代わりに融点の高い油を使えば高音でも溶けにくいチョコレートになる。戦中は東南アジアや潜水艦内(熱がこもると40度を超える)内でも日本兵の食用に作っていた。ちなみにスーパーでみる殆どの普及品チョコレートはにはココアバターだけでなく植物性油脂も使われている。
商品分類(名称の分け方)
チョコレート分が多い順に
チョコレート>ミルクチョコレート>準チョコレート>準ミルクチョコレート
カカオ分35%以上かつココアバター18%以上がチョコレートを名乗れる
年表
- (~1521年まで)オルメカ文明/マヤ文明がクリオロ種をメインにカカオ崇拝(通貨としても利用)
- (1521年)滅亡したアステカ王国らへんを植民地にしたスペインがカカオを広め始める
- スペイン人がココアに砂糖を入れ出すようになってくる
- メキシコでカカオの消費量増加に伴いエルサルバドル、エクアドル、ベネズエラがフォラステロ種の産地として台頭
- 味の悪いフォラステロ種の増加によりカカオの価格が下落し、市民に普及
- (1660年頃)フランス人がカリブ海諸島(マルチニーク島)にカカオを持ち込んで栽培を始める。
- (1757年)トリニダード島(スペイン領後のイギリス領)でクリオロ種が病気のため壊滅。生き残ったクリオロとフォラステロ種を交配してトリニタリオ種が作られる。
- (1828年)ヴァン・ホーテン(オランダ)がココアパウダーを作る発明から特許を取得(カカオマスからここアバターを搾り取る技術)
- (1879年)アフリカ本土(ガーナ)にフォラステロ種が移植される
- (1847年)ブリストルでジョーゼフ・フライがカカオマスにここアバターを混ぜて固形チョコレートを初めて作る。
- (1849年)ココアパウダーに色々混ぜて売るのが流行る。その流れで粉末ミルクを混ぜたミルクココアが発明される
- (1876年)アンリ・ネスレ(スイス)がコンデンスミルクをチョコレートに混ぜてミルクチョコレートを発明する
- (1878年) 日本で初めてチョコレートが売られる@米津風月堂
- (1918年)日本で初めてチョコレートが製造される@田町by森永製菓
- (1935年)ロウントリー社キットカット販売開始。当初の商品名はチョコレート・クリスプ
- (1941年)原材料不足・価格統制などにより商品名をチョコレートクリスプからキットカットに変え、戦時中は青いラベルで売り始める
- (1958)ブリュッセル万博を機に家族経営小規模生産だったベルギーチョコレート(ノイハウス、ゴディバ等)が世界的に注目を浴びる
- (1988)ネスレがロウントリー社を買収。以後アメリカ以外ではネスレ社がキットカットを販売。アメリカではハーシー社が販売権保有。
戦時中の日本のチョコレート事情
- 1940年12月でカカオ豆の輸入ストップ
- 戦中は森永製菓が50人社員をインドネシアに派遣し、現地のカカオでチョコレートを作っていた
- 代用チョコレート
- 進駐軍が消費していたチョコレートはハーシー社*2のチョコレートといい、闇市に出回っているものや「ギブミーチョコレート」でもらえるやつはこれらしい。
余談:バレンタインデーに関する記載が一切ない
本書を「バレンタイン」で検索をかけても前書きで1単語だけ登場するだけで詳しい解説とかは一切なかった。 広告とかマーケティングの章は一応あるけど、チョコ業界的にバレンタインデーが成功したのは日本だけなのでしょうか。