「そのオリーブオイルは偽物です」を読んだ
オリーブオイル産業の実態、というような感じでなかなか面白かったです。
3行で要約
- ちゃんとしたオリーブオイルは美味しい
- 日本に出回ってる(エキストラバージン)オリーブオイルは偽物が多い
- あまりケチらず1L3000円くらいは出して書いましょう
本書の要点としては
- なぜ品質の悪いオイルが流通するか
- 偽装されないためにどうするべきか
- 品質検査に人間の官能検査を入れる
- 別の機関やコンテストなどのIOC以外の評価基準で担保されたオリーブオイルを買う
というところです。
そのオリーブオイルは偽物です: 値段が高くても本物はごくわずか (実用単行本)
- 作者:俊哉, 多田
- 発売日: 2016/05/27
- メディア: 単行本
オリーブオイルの等級
この本を読むまでオリーブオイルの規格を知らず、 エキストラバージン:生食用 バージン:加熱用 みたいな雑な理解をしていたので本書中の記述をまとめました。 下に行くほど品質の低いオイルになります。
- オリーブオイル
- エキストラバージン
- バージン
- オーディナリーバージン
- ランパーチバージン
- オリーブオイルと称することができない
- ポマースオイル
オリーブオイルはオリーブ果実から物理的に粉砕・圧搾・遠心分離のみで取り出すオイルバージンオイル(一番搾り)のこと。バージンオイルの絞りかすをさらに遠心分離器にかけたり、化学溶剤で抽出するオイルをポーマスオイルとして呼び分ける。
オリーブオイルは一番良いものからエキストラバージン、バージン、ランパーチバージンと続く。
エキストラバージン
バージンオイルの中でももっともグレードが高いものはエキストラバージン。原料の鮮度(化学検査)、風味(人的検査)で分けられている
エキストラバージンとバージンの違いは、原料である生のオリーブ果実がどの程度新鮮か、あるいは新鮮ではなく発行してしまっていたか(これを測る化学指標は「酸度」または「酸化」と呼ばれます)、オリーブオイルとなってからどの程度参加されやすくなっているか(これを測る化学的指標は「過酸化物価」と呼ばれます)など、いくつもの理化学的分析と、人が実際にそのオイルを食して風味を鑑定する「官能検査(味覚試験) 」によって決まります。エキストラバージンと名乗れるのは、全ての風味官能検査で味や香りに欠点が一つもないことが条件であり、大変貴重なオイルです。
この基準は国際オリーブ理事会IOC(International Olive Council = 略称IOC)の定めている規格であり、IOCに加入していない日本では「エキストラバージンオイル」呼称を制限する法律はない。3
https://japan-olive.or.jp/world_standard.html
農業マフィア
EUの全身であるEECから莫大な補助金がオリーブ業界にばらまかれたのです。補助金が出れば、それに群がる輩が出てくるのは世の常。莫大な補助金を狙って、反社会的な勢力とそれに連なる邪悪な政治家たちがオリーブとオリーブオイルを食い物にしてしまいました。
- 本書は社会悪を暴く本ではないので具体的にマフィア側への取材や言及は少なかった
- どれくらいの規模感
- どれくらいの金が動いているのか
- IOCの人選やオリーブオイル品質偽装にマフィアが一枚噛んでいるとのこと
この話題に関しては本中での記述が少ないので第一次産業とヤクザがどのように関係しているのか興味があるので適当に類書で読んでみる
- 作者:智彦, 鈴木
- 発売日: 2018/10/11
- メディア: 単行本
IOCの検査が加盟国で正しく運用されていない
オリーブオイルの品質を検査する方法としては
- 化学分析検査
- 専門家による風味官能検査
の2種がある。そしてIOCの加盟国の検査としては前者が中途半端な基準で運用されているだけ。
IOCが定めた化学分析検査は設定基準がかなり緩く、品質が悪くても合格してしまう程度の基準です(by偽装の黒幕はだれだ!)
- 風味官能検査が運用されない理由は
- 品質の偽装が難しい
- 加盟国の官僚に対する闇の勢力の影響が強い
どんなにIOCが業界の健全化や透明化に取り組むための品質規格を制定しても、それを施行し運用する側である加盟各国の政府や官僚たちが闇の勢力に取り込まれ、規格基準を運用するための制度整備が叶わなくなってしまったのです。
偽装
- 偽装は大きく2つに分けられる
- グレードの偽装
- 他の油の混入
- 偽装される際はポマースがバージンを名乗るどころか、他の植物性油脂を混ぜたりすることもある。
最も一般的な偽装は、オリーブオイルにほかの安い油を混ぜてエキストラバージンとして流通させる手法で、混ぜものとして使われるのは、大量生産されているひまわり油、ピーナッツオイル、大豆油などの安価な油です。
1981年にはスペインで、菜種油にプラスチック製造に使われる毒性の強いアニリンを混ぜた物が「オリーブオイル」として販売され、それを食べた800名が死亡、2万人以上に何らかの健康被害が起こるといった中毒事件も起きています。
まるでアニリンを含む安い油を混ぜて売って、アニリンが原因で死亡事故が起こったかのような記述だが、wikipediaとの記述と少し内容が違っている
- アニリンは偽装のためではなく、食用でない菜種油を間違って食べられないように異臭がするように混ぜたもの
To discourage human consumption, the oil was denatured by the addition of aniline to make it smell and taste bad.
- 偽装した業者(ITH)がアニリンを取り除いた
It was then imported as cheap industrial oil by the company RAPSA at San Sebastián, handled by RAELCA, and illegally refined by ITH in Seville to remove the aniline, resulting in a palatable product that could then be illegally sold. It was sold as "olive oil" by street vendors at weekly street markets, and was used on salads and for cooking.
The commonly accepted hypothesis states that toxic compounds derived during the refinement process were responsible.
この事件カネミ油症並み、いやそれ以上にやばくないか。。。
貿易の現状
- そもそもイタリアではエキストラバージンは国内でほとんど消費されており、輸出に回っていない
「オリーブオイル大生産国の一つであるイタリアでは、本物のエキストラバージンはほとんどが国内で消費され、輸出に回っていない。その一方で、大量に輸入される精製オイルは、国内で消費されずその多くが輸出に回されている」by劣悪オイルはこうして「エキストラバージン」に化ける
-「生産国から輸出されたEVO」より「消費国が輸入しているEVO」の方が圧倒的に多い5
コスト感
3000円/1Lはするとのこと。
1リットルのオリーブオイルを作るには原料果実代だ明けで450円以上。これに搾油コストや瓶詰め資材費、輸送費などを載せれば、仮に生産者や販売者の利益がゼロだったとしても、どんなオリーブオイルも1リットル1000円以下では売れないはずです。(通常の利益を載せれば、最低でもその3倍の3000円くらいにはなるでしょう。)
どうやってオリーブオイルを選ぶか
- オリーブオイルソムリエが経営するお店でアドバイスをもらって買う
- 透明のボトルに入っているものは光による劣化の恐れがあるので買わない
- OLIVE JAPANなどのコンテストで入賞したオイルを選ぶ
ちなみに私は家の近所のオリーブオイル専門店で3000円/500mlのものを買ってます6
賞味期限
- 2年が限度とのこと。
オリーブオイルには美味しく品質を楽しめる「寿命」があります。未開封で冷暗所保管であれば、作られてから2年間程度は品質を保持すると言われますが、条件が悪ければそれより早く劣化してしまいます。これは油の「自動酸化」という現象で、避けることができません。
脚注
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“日本の法律では、「ボトル詰めされた場所が属する国が原産国」ということになっています。つまりボトル詰めがイタリアでされていれば、中身がイタリア以外のどこかで作られたものでも、そのオリーブオイルは「イタリア原産」という表記をして良いことになります”(こうして消費者はだまされる)↩
-
“オリーブに向けられた農業補助金が多くの闇の勢力により私物化され、どんなにIOC業界の健全化や透明化に取り組むための品質企画を制定しても、それを施行し運用する側である加盟国の政府や完了体が闇の勢力に取り込まれ、規格基準を運用するための制度整備が叶わなくなってしまったのです。”(国際オリーブ理事会(IOC)の光と影)↩
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調べたところ、オリーブオイル系の規定はJASの「オリーブオイル」、「精製オリーブオイル」のみであり、エキストラバージンオイル呼称を制限するものは確かにありませんでした。参考:http://www.galleria-nuovo.com/%E3%82%AE%E3%83%AA%E3%82%B7%E3%83%A3%E7%94%A3%E3%82%AA%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%96%E3%82%AA%E3%82%A4%E3%83%AB%F0%9F%87%AC%F0%9F%87%B7/olive-oil-ioc-jas/↩
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“EUの庇護のもとに育ったIOCですが、皮肉なことにEU各国にとってIOCは完全な「邪魔者」となり、冤罪ともいえるような「不正」をでっち上げては理事たちを次々に訴追・追放、ついにはIOC自体が不正の温床だとして、EUは2003年にその予算を大幅に削減しました。これによりIOCは業界やEUなどの加盟各国をリードして品質規格制度を運用する実効的な機能を果たすことができなくなり、EUの言いなりの国際機関になり下がってしまったのです。”(国際オリーブ理事会(IOC)の光と影)↩
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出展:IOC,ISMEA,EL Cultivo del Olivo and Caianni & COと書いてるが、どの記事、論文、レポートからの出展なのかわからないので原典が見つからなかったのんで本中の図をそのまま引用した↩
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一銘柄のみであまり安くないが美味しいのでずっとリピートしてる↩